伊藤 :中嶋さん、一つ気になることがあるんですけど……
中嶋 :何だ?
伊藤 :ちゃんと寝てるんですか?
中嶋 :ああ、四時間ほどな。お前はいつも良く眠っているな。
伊藤 :はい、俺の睡眠時間は七時間以上って決まってますから。
中嶋 :啓太、七時間睡眠は凡人のすることだ。天才は五時間しか眠らない。
伊藤 :そうなんですか? じゃあ、四時間の中嶋さんは天才以上ってことですよね。やっぱり凄
いです、中嶋さん。
中嶋 :ふっ……可愛いな、お前は。
伊藤 :わ~い、褒められちゃった!
中嶋 :元気になった様だな。
伊藤 :はい、有難うごさいます、中嶋さん。
中嶋 :ふっ、礼など必要ない。身体で払って貰うからな。
伊藤 :えっ!?
中嶋 :言ったはずだ。この貸しは高くつく、と。
伊藤 :あれって本気だったんですか?
中嶋 :俺が冗談を言うと思うか?
伊藤 :あ……やっぱり……あれ、ですか?
中嶋 :……まずはこれを三十部コピーしろ。次にこの書類を会計部へ提出し、丹羽を捕獲しつつ
帰還。その後、そこの資料をファイリング――……(以下、延々と続く)
伊藤 :……鬼。
伊藤 :ちょ、ちょっと待って下さい!
成瀬 :どうしたんだい、ハニー?
伊藤 :幾ら練習しても、男の俺が女声を歌える訳ないじゃないですか! それにドイツ語なんて
知らないし!
七条 :大丈夫ですよ。口パクにしますから。
伊藤 :でも、それって皆を騙してるみたいな気がします。そういうのは、俺……
西園寺:確かにそうだな。彼も以前、それをやってメディアに叩かれたことがある。
伊藤 :ほら、プロの人でさえばれちゃうんだから、素人の俺に出来る訳ないです!
中嶋 :なら、俺が教えてやろう。その身体に沁み込むまで、たっぷりと……な。
遠藤 :そんなことは俺が絶対に許さない!
伊藤 :有難う、和希。
遠藤 :安心しろ、啓太! 啓太のためなら、国も法も、総て俺が変えてやる!
伊藤 :……和希。
丹羽 :ある意味、てめえが一番危ねえぜ。
篠宮 :遠藤、また寮則を破る気か!
岩井 :……篠宮、それは少し違うと思う。
伊藤 :やっぱりこの企画自体に無理があるんだよ。
滝 :そないなことない。
海野 :うん、僕も良い考えだと思うよ。
全員 :……という訳で……啓太っ!!
伊藤 :わ~ん、俺、やっぱり言えませ~ん!
伊藤 :和希……俺達、全然、お月見してないんだけど……
遠藤 :そうだな。
伊藤 :そのために来たんだろう?
遠藤 :ああ、でも、俺はこっちの方が良いな。啓太を一杯、堪能出来るから。
伊藤 :なっ……!
遠藤 :だから、もう一回……ねっ?
伊藤 :お前……何、言って……あっ……駄目、だって……和、希……
伊藤 :中嶋さん、俺、また一つ気になることがあるんですけど……
中嶋 :今度は何だ?
伊藤 :煙草、いつ消したんですか?
中嶋 :……
伊藤 :持ってましたよね? でも、俺にキスするときは――……
中嶋 :啓太、言ったはずだ。お前は俺のことだけを考えていろと。それなのに、そんなくだらんこ
とを気にしていたのか?
伊藤 :えっ!? あの……だから、俺――……
中嶋 :お仕置きだ。
伊藤 :どうして、中嶋さ……ん……あっ……ん、んっ……
伊藤 :中嶋さん……手、痛くないですか?
中嶋 :ああ。
伊藤 :本当ですか? 何か腫れてる様に見えるんですけど……
中嶋 :……
伊藤 :細い窓枠を結構、思い切り叩いてましたよね? 本当に痛くないんですか?
中嶋 :昨夜、この手にあれだけ啼かされてまだ足りないのか? やはりお前は淫乱だな、啓太。
伊藤 :ち、違――……
七条 :痛くないなら、箸くらい自分で持って下さい。
西園寺:全くだ。啓太を使うな。
中嶋 :お前達に見せつけているだけだ。
伊藤 :中嶋さん……嬉しいです。
伊藤 :和希、Graceってどんな猫だろう?
遠藤 :そう……だな。白とロシアンブルーの様な灰色の毛並みのミックスの女の子で、子猫のと
きはピンボケした様に焦点が合わなくて目が辛かったよ。名前の由来は灰色だからGrey、
Graceってつけたんだ。ラブリーは臆病だから外に決して出ないけれど、とても気が強いん
だ。俺に最も懐いているのに、同時に俺が最も噛まれているよ。そう、不二子みたいな性格
と言った方がわかり易いかな。自分の方から甘えてきたのに、突然、急に掌を返すんだ。裏
切るのなんて朝飯前。たまにマジ噛みするから困るけれど、そんなとこもまた可愛いから、
結局、何をしても許されてしまう愛すべき存在なんだ!
伊藤 :か、和希……?
遠藤 :……! 今……何を言ってたんだ、俺?
伊藤 :……和希……
遠藤 :……啓太……
伊藤 :も、もう忘れよう……怖いから……
遠藤 :そ、そうだな。行こう、啓太……
丹羽 :よお、啓太!
伊藤 :あっ、 王様! 掃除ですか?
丹羽 :ああ、どっかの誰かさんのお陰でな。
遠藤 :整理整頓も出来なくて、よく生徒会長が務まりますね。
丹羽 :てめえ……いつか絶対、殴ってやる。
伊藤 :……っ!!
遠藤 :どうした、啓太?
伊藤 :……いる。
遠藤 :何がだ?
伊藤 :俺にはわかる……和希、ここにはグレート・マザーがいる!
遠藤 :ああ、あれのことか。でも、啓太、男にマザーは変だろう?
伊藤 :うん……でも、これはその瞬間の直感だから、女の名前が浮かぶこともあるんだ。そうい
う奴はグレート・マザーになる! 今、俺の頭に閃いたのはスーザンッ!!
丹羽 :ほ~、さっすが俺の部屋だ!
遠藤 :……本当に停学にしますよ。
伊藤 :ううっ……俺、もうやだっ!! 家、帰るっ!!
遠藤 :け、啓太っ!? 待て! 俺から離れるなっ!! 啓太~っ!!
中嶋 :ちっ、バカップルが……!
2007.10.26
シリアスが多いせいか、
コメディに餓えてしまいました。
だから、本編に自分でお馬鹿なオチをつけてみました。
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