続 ときめき

伊藤  :ところで、中嶋さん、二十分も一人で何をやってたんですか?
中嶋  :ああ、明日のことを色々と考えていた。
伊藤  :……あの……出来れば豪華でも興味深いコースでもなく、普通のコースで……
中嶋  :良いだろう。
伊藤  :えっ!? 本当ですか?
中嶋  :俺は常にお前の意思を尊重している。お前がそう言うのなら、明日は普通のコースにしよ
    う。但し……覚悟しておけ。俺に冷水を浴びせたのだからな。
伊藤  :俺、そんなことしてませんよ。
中嶋  :わからないのなら、それでも良い。明日はお前に言葉の力というものをたっぷりと教えて
    やる。
伊藤  :あの……他のコースはありますか?
中嶋  :後は誕生日コースだな。
伊藤  :それはどういう……?
中嶋  :手淫と嬌態の限りを尽くして俺を楽しませるコースだ。
伊藤  :……!
中嶋  :俺はどちらでも良い。明日までに自分で決めろ、啓太。
伊藤  :……はい……
中嶋  :ふっ、楽しい一日になりそうだ。


続 紅葉狩り

伊藤  :あっ、ほら! この紅葉も綺麗だよ、和希!
遠藤  :啓太、そんなにはしゃぐと転ぶぞ。
伊藤  :もう子供じゃないよ、和希!
遠藤  :そうだけどさ。
伊藤  :あれ、何だろう? この葉だけ色が違う。
遠藤  :ああ、それは木の葉蝶だよ。今は翅を畳んでいるから枯葉にしか見えないけれど、表は
    綺麗な藍色の――……
伊藤  :レナード。
遠藤  :……!
伊藤  :あのとき……全部、始末するって言ったのに……
遠藤  :け、啓太!?
伊藤  :和希の嘘つき! 俺、やっぱり家に帰る!
遠藤  :待て、啓太! 俺が悪かった! だから、俺から離れるなっ!! 啓太~っ!!


続 無邪気な恋人

遠藤  :石塚、手配は出来ているな?
石塚  :はい、不発弾処理ということで駅を中心とした六ブロックに機動隊を配置しました。各交通
    機関は一つ手前で折り返し、車両と通行人は総て警察によって迂回路へと誘導されていま
    す。なお、念のため上空から三台のヘリにて周辺十ブロックを監視。強行突入を図る者を速
    やかに発見、確保に努めています。
遠藤  :完璧だ。まさに水も漏らさぬ布陣だ。
石塚  :恐れ入ります。
遠藤  :だが、内の生徒がこの程度の障害で簡単に諦めるはずがない。気を抜くな!
石塚  :和希様! 何者かがこちらの通信網に侵入。次々と回線を遮断しています!
遠藤  :やはり来たか。だが、その手は既に織り込み済みだ!
石塚  :上空のヘリから入電。不審な車両とバイクが警戒ラインを突破して接近中です!
遠藤  :それは陽動だ! 必ず本体が別にいる! 探し出せ!
石塚  :こ、これは……!
遠藤  :どうした!?
石塚  :和希様! 学園の生徒達が大挙してこちらへ押し寄せて来ます!
遠藤  :くっ、人海戦術か! 石塚、奴らはその中だっ!!
石塚  :総員、怯むな! 全員、確保せよ! 繰り返す! 全員、確保せよっ!!
遠藤  :必ず俺が護ってやるからな、啓太っ!!
伊藤  :……? 何か向こうの方が騒がしいけど、事故かな。良かった、昨夜の内に隣の駅に変
    更しておいて。やっぱり近場は恥ずかしいよ……


続 素敵な贈り物

伊藤  :あ~、本当……これ……気持ち良い……
遠藤  :あの~、もしもし、啓太君?
伊藤  :うん? 何……?
遠藤  :……やっぱりあげない。
伊藤  :えっ!? どうして? 俺、凄く気に入ったのに!
遠藤  :だって、啓太……先刻から、そればかり抱き締めているだろう。俺がここにいるのに……
伊藤  :馬鹿だな、和希は。この子は俺が抱き締めてやらないと誰もいないだろう。そして、俺を抱
    き締めるのは……抱き締めても良いのは、和希だけだよ。
遠藤  :啓太、今夜は離さないからな!
伊藤  :うん……和希……


続 二択

中嶋  :やはりお前は淫乱だな。
伊藤  :ち、違います!
中嶋  :プレゼントより俺が欲しいのだろう?
伊藤  :だって、物と中嶋さんを比べられる訳ないじゃないですか。俺にとって、中嶋さんは何より
    も誰よりも大切な人なんです。
中嶋  :そうか。なら、俺の言うことは何でも聞けるな、啓太?
伊藤  :えっ!? あの……
中嶋  :安心しろ。また選ばせてやる。
伊藤  :も、もうやだ~っ!!


続 陶酔

丹羽  :はあ、全く……参ったぜ。
篠宮  :ああ、まさか伊藤があれほど弱いとは思わなかった。
丹羽  :違うだろう、篠宮……酔った啓太……あれは犯罪を誘発するぞ。
篠宮  :そ、そうだな。以後、気をつけるとしよう。
丹羽  :ところで、この酒……飲んでも良いのか?
伊藤  :駄目!
丹羽  :け、啓太!?
伊藤  :これは中嶋さんの! はい、中嶋さん!
中嶋  :ああ。
伊藤  :中嶋さん、美味しい?
中嶋  :……甘いな。
伊藤  :良かった! 気に入ってくれて!
丹羽  :中嶋、何しに戻って来たんだ? さっさと啓太を連れて行けよ。
中嶋  :丹羽、何でも言うことを聞いてくれるそうだな?
丹羽  :はあ?
伊藤  :王様、先刻、啓太のお願い、何でも聞いてくれるって言った!
中嶋  :啓太の願いは俺の願いだ。そうだな、啓太?
伊藤  :はい、中嶋さん!
中嶋  :という訳で、俺達は明日は休む。
丹羽  :ちょ、ちょっと待て。確か明日は臨時総会の――……
伊藤  :わ~い、明日は中嶋さんとずっと一緒だ!
中嶋  :さあ、これでもう用は済んだな。部屋へ戻るぞ。
丹羽  :待て、中嶋!
伊藤  :はい! 中嶋さん、大好き!
中嶋  :そうか……邪魔したな。
丹羽  :……マジかよ……
篠宮  :丹羽、あれは本当に中嶋か? あいつのあんな甘い顔は初めて見たぞ。
丹羽  :これ……勝手に貰うぞ、篠宮。
篠宮  :ああ、俺にも一杯くれ。何か飲みたい気分だ。
丹羽  :……甘いな
篠宮  :ああ、甘いな。
丹羽  :……やっぱり酒は二十からにするべきだった……


続 その蒼に魅せられて

伊藤  :……あ……和、希……んっ……
遠藤  :啓太……
伊藤  :……っ……!
遠藤  :どうした、啓太?
伊藤  :今……変な音がしなかった?
遠藤  :さあ、俺は気がつかなかったな。
伊藤  :何か……くぐもった水音の様な……
遠藤  :ああ、それは俺達だよ。ここは静かだから、キスの音が響いたんだろう。
伊藤  :……! 和希の、馬鹿~!



2008.2.1
最早、王様はコメディアンの域に達しています。
そして、篠宮さんは天然ボケキャラとして、
その地位を確立しつつある今日この頃です。

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Café Grace
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