その日、明日叶はケヤキ並木に面した洒落たオープン・テラスで慧と静かな時間を過ごしていた。
  魁堂学園を卒業後、難関な試験に合格して二人とも晴れてマニュスピカになった。今は大学に通いながら、様々な任務についているが、どんなときも明日叶の傍には慧がいた。明日叶の持つ能力――真実の瞳(トゥルー・アイズ)――はマニュスピカ内で最も特別視されていたので、慧がボディ・ガードを兼ねて必ず付き添っていた。しかし、それは半分、建前で……実はこの恋人はかなり独占欲が強かった。
『……お前が他の男のものだって、俺は気にしないぜ……』
  以前、チーム・グリフで一緒だったディオにそう言われて激昂した姿を思い出し、明日叶は小さく微笑を噛み殺した。普段はクールなくせに……
「どうした、明日叶?」
  向かいに座っている慧が怪訝そうに尋ねた。
「別に」
  軽く首を振ると、明日叶はカフェ・オ・レに手を伸ばした。慧が声を潜めて呟いた。
「……気づいてるか?」
「うん……囲まれてる」
「ああ、ざっと目視しただけで五人はいる。だが、敵意はない。安心しろ」
「そうだな。あれは狙うと言うより監視してるみたいだ。標的は誰だろう?」
「四時の方向にいる。あの男だ」
「……」
  明日叶はさり気なく視線をそちらへ向けてみた。
  そこには茶色の癖毛をした若い男が座っていた。どこか幼さを感じさせる容貌に、春の陽だまりの様な微笑を浮かべて幸せそうに苺のケーキを食べている。
(よっぽど苺が好きなんだな……ふふっ)
  何となく親近感を覚えた明日叶は無意識に微笑んだ。すると、ふと彼が顔を上げた。澄んだ蒼穹の瞳がじっと明日叶を捉える。やがて口唇が無音の言葉を綴った。
『True eyes』
  それが最初の出会いだった。


2009.12.31
慧と明日叶の休日は、
静かなウィンドウ・ショッピングが似合います。
でも、慧は明日叶しか見ていなさそうです。

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