素敵な天啓を授けてくれた猫丸様へ
小品『Through the night』を捧げます。

Through the night

17 July 2010  Dedicated to N


「もう、やあっ……眞鳥さっ……ん、ああっ……!」
 大きなベッドに横たわって明日叶は艶めかしく身を捩った。ねっとりと内腿を這う熱い舌を強請って自ら大きく脚を広げる……が、眞鳥はクスッと笑っただけで再び白い肌の愛撫へと戻ってしまった。
「あ、あっ……」
 明日叶の嬌声が静かな寝室に響き渡った。中心が切なそうにふるりと蜜を零す。
「あっ……眞鳥さんっ……あ、あっ……もうっ、俺っ……!」
 無意識に右手が下肢へ伸びた。
「ん~、おいたは駄目ですよ、明日叶」
 その指を眞鳥がやんわり絡め取った。少し身を乗り上げ、明日叶の瞳を覗き込んで妖しく微笑む。
「もっと、もっと気持ち良くなりたいでしょう? なら、もう少し我慢しないとねえ」
 眞鳥が明日叶の首筋に甘く吐息を吹き掛けた。
「あ、んっ……眞鳥、さんっ……」
「ふふっ、あんたは本当にここが弱いですねえ。そんなに感じます?」
「んっ……」
 コクコクと明日叶は頷いた。
「ここよりも?」
「ああっ……!」
 赤く熟れた胸の実を不意に強く押し潰されて明日叶の腰が小さく震えた。緩々と揉み込む様に何度も捏ねられ、内に燻る熱を更に煽られる。先刻から、こうして弱い快感を延々と与えられ続けている明日叶はもう身も心も沸騰しそうなほど昂ぶっていた。これ以上、焦らさないで……
 すっと明日叶の頬を涙が伝った。
「ああ、泣かないで、明日叶」
 眞鳥がそれを優しく口唇で拭った。そのとき、浴室から慧が戻って来た。しなやかな裸体を覆いもせず、ただ眞鳥を見て冷たく目を眇める。
「また明日叶を泣かせたのか、中川眞鳥」
「そんなつもりはなかったんですが、触り甲斐のある身体なんでねえ……つい。でも、あんたが遅いから悪いんですよ、藤ヶ谷」
 優雅に髪をかき上げると、眞鳥は見せつける様に明日叶に口づけた。深く口腔を愛撫され、ピクッと明日叶の身体が跳ねた。
「眞鳥、さっ……んっ……ふっ……」
 無意識に明日叶は腰を擦りつけた。慧が短く舌打ちする。眞鳥が宥める様に首筋を撫でながら、そっと明日叶から口唇を離した。
「あっ、やだっ……眞鳥さん、もっと……」
「でも、ほら……藤ヶ谷が戻って来ましたよ」
 チラッと眞鳥が視線を流した。それを追って漸く明日叶も慧に気がついた。
「慧……慧……」
 呼ばれて慧が枕元に腰を下ろした。
「明日叶……」
 愛しそうに頬に左手を添える。すると、明日叶が少し眉を寄せた。
「……冷たい」
「シャワーのせいだ」
「でも、気持ち良い……」
 ほう、と明日叶が甘い吐息をついた。眞鳥が小さく口の端を上げた。
「あんたの身体、凄く熱いですからねえ」
「もっと触って、慧……」
 恍惚と明日叶が呟いた……が、眞鳥がすぐさま首を横に振った。
「駄~目。あんたを触るのは俺ですよ、明日叶、藤ヶ谷には違うことをして貰いなさい。ずっと疼いてるでしょう、ここ」
「あ、ああっ……!」
 突然、指を含まされ、明日叶の背が大きくしなった。淫らな水音が聞こえるほど内壁をかき混ぜられて声が止まらない。
「あっ……ああっ……眞鳥さんっ……眞鳥さ、んっ……」
 再び情欲に染まってゆく明日叶を見て慧が不快そうに顔を顰めた。眞鳥が軽く慧を見上げた。
「面白くないですか、藤ヶ谷?」
「当たり前だ」
「なら、体勢を変えても良いですよ。あんたが、まとりんって呼んでくれたら」
「……」
 その言葉に慧から抑えようのない怒りが発せられた。冗談ですよ、と眞鳥は笑った。そして……
「明日叶、ちょっと我慢して下さいねえ」
「……えっ!? あっ、やあっ……!」
 くるっと身体を反転させられたかと思うと、明日叶は四つ這いになっていた。眞鳥に腰を向ける恥ずかしさにキュッと目を瞑る。すると、誰かに顎を静かに取られた。
「……明日叶」
「あ……」
 その声に答える前に口唇が重なった。慧の舌が直ぐに明日叶を捉え、熱く絡みつく。
「ふ、あっ……んっ……慧……」
「明日叶……っ……」
「んっ……」
 明日叶の胸が甘く疼いた。しっとりと潤む肌は更に艶めかしい色香を放って二人の男を誘う。好きな人に触れられる無上の歓びを知っているから。それをもっと確かに感じたくて明日叶は夢中で慧の腕を掴んだ。そのとき、眞鳥が後ろから覆い被さってきた。
「明日叶……」
 耳元で低く囁かれて、蕩けた身体が小波の様に揺れた。
「あ、んっ……っ……」
 薄く開けた明日叶の視界に真紅の瞳が映った。少し顔を横へ向けると、今度は浅葱色の眼差しが見える。際限なく視る重みに押し潰されそうだった自分を、個がなかった眞鳥と何も持たなかった慧が救ってくれた。その差し伸べられた手に惹かれるのは自然な流れというものだろう。だから、後悔はない。我知らず、明日叶は呟いた。
「抱いて、慧……眞鳥さん……」
「ああ」
「勿論……夜は長いですからねえ、明日叶」
「んっ……」
 明日叶は幸せそうに頷いた。そして、今夜も星が瞬き終えるまで愛される……


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