リンク記念に頂きました。
『雨でも、湯上がりでも良いので濡れているSS』という
Graceのリクエストを、
労わりと癒しの中で描いています。



七条・・・「後悔の雨が晴れる時」



七条は恋人を残したままで、バスルームに消える。

今回も、恋人が起きれない程に、抱いてしまった。
そう反省しても、繰り返してしまう。

不安はいつも、心の奥に残る。

後悔は心に溜まり、溜息に変化していく為、
夢路を行く恋人に届かない様に、頭から一気にシャワーを浴びる。



《愛したい。大切にしたい》



自分が抱えるモノを受け止めてくれる。
そんな甘えがいつも恋人を壊す。

冷たい水が体の隅々を流れて行く。
体に残る、恋人との愛の痕を流したくはない。
恋人に自分の全てを入れられたなら、
ここまで苦しまないのか・・・。

七条の負の思いはメビウスの輪の形のまま固まっていく。

「愛している。それだけなのに。どうして・・・」

言葉は排水溝に流れては行かず、七条を苦しめる。



「・・・っ」
「七条さんと俺がお互いを、愛している。それだけで良いと思います」

シャワーの音。自分の負のオーラが、啓太の音を隠していたのか、
いつの間にか、バスルームに入ってきた啓太が七条の背中を抱く。

「伊藤君・・・」

きゅっ。
人工的な雨が止まる。

「俺は七条さんの愛で、とても幸せです。
雨に打たれて、今までの事を思い出して後悔したりしないで。
ぶつけて?話して?そして・・・離さないで下さい」

雫と違うモノが七条の瞳から流れる。


「君は、風の様ですね。僕の心の雲を吹き飛ばしてくれる」

髪の雫と、瞳の雫が混ざり、啓太の手のひらに落ちた。

「七条さん。昨日は太陽でしたよ。
俺・・・一体いくつ変化するんでしょうね・・・くすっ」

振り向き、愛しい体を抱き締める。
少し俯き、髪の雫で瞳の雫を恋人に分からない様にしながら・・・。

「君は全てですから・・・」
「もぅ・・・甘すぎですっ」
「ふふっ。そうですか?」

『そうですっ。好きですよ』
その言葉と共に、啓太は恋人に笑顔のキスを贈る。

七条の心は少しずつ晴れていく。


長い時間溜まった闇は、恋人の明るさで、
同じ位、長い時間必要としても、減っていく。

離れなければ、最後には最高の世界が待っている。
笑顔の恋人共に。
優しさの溢れる世界が・・・。



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Café Grace
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