リンク記念に頂きました。
『雨でも、湯上がりでも良いので濡れているSS』という
Graceのリクエストを、
日常風景の優しいひとときに仕上げています。



和希・・・「夕立の後」



「わぁぁ」
「凄いな・・・」

久し振りのデートで街に出た二人は、いきなりの夕立に襲われる。
周囲の景色は雨一色になった。

すぐ近くで傘を買って、雨を避けて学園までの道を急ぐ。
お互いの声すらも聞こえない程の大雨は、
傘の意味も分からない程に、体を濡らしていく。



「もう少しだからなっ。啓太っ」
「うんっ」

すでに、濡れたその手は、傘から出され
愛する者と雨で、はぐれない様に繋がれた。
しっかりと。

走り出し、いつものコースでバス停に着く。
傘では濡れる雨でも、バス停の屋根は2人を優しく守る。



「・・・濡れちゃったね」

啓太が髪をフルフルと振るい、雫を落とす。

「あぁ・・・啓太。寒くないか?」

ジャケットの中から、無事だったハンドタオルで啓太の頭を拭く。
和希の優しさは変わることなく啓太を守る。

「和希・・・ゴメン。車だったり、仕事中なら・・・こんなに濡れないのに。
和希の体を先に拭いて?」

啓太は、そっと手を掴む。
恋人の肩には多くの人が乗っている。
自分の為に崩して欲しくはない。
その思いを込めて。

啓太がタオルの下で俯くと軽く「ポカリ」と、殴られる。

「和希・・・」
「確かに、部屋の中や、自分の車なら濡れないかもしれない。
でも、そんな世界。俺はいらない。
啓太と一緒に手を繋いで、啓太と一緒に走る。
それが幸せだって、昔も今も感じているから」

啓太の瞳が地面から和希に移る。
『期待。嬉しい。愛してる』
プラスの感情溢れる視線を、和希に向ける。

「和希・・・ほんと?」
「勿論。俺は啓太と一緒が一番最高だからな」

和希の微笑で、啓太の顔に笑顔が戻っていく。

「そうそう。その笑顔。それが一番」

軽くキスをされ、啓太が甘えようと手を出した時・・・。

「残念。最高の啓太からのキスと抱き締めがもらえそうだったのに
バスが来た」
「あっ・・・」

また曇りそうな表情に、

「まだ休みの時間はあるから。もっと濃い時間をプレゼントするよ」
「・・・和希・・・」

その言葉を耳元で伝える。

「うん」



2人を乗せたバスが、学園に着く頃には
光り輝く未来の様に、空も晴れ渡る・・・



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