少しでも新しい作品への何かになれたら、
と書き下ろしてくれました。
一緒にいられる幸せに癒されます。



「思い人」―いつでもあなたを―



「伊藤っ。週末行かないか?」

クラスメートが
長く感じる授業が終わったと同時に
俺の肩を叩いて
笑顔で明日から始まる映画に誘ってくれた。

今、誘われたモノは
ずっと楽しみにしていた映画だったけれど・・・
出来る限り残念そうな眉に笑顔を同時にしながら・・・

「あっ。ごめん。用事があるから行けないや・・・
ラストは内緒で、後で教えてくれよなっ」
「嫌だよっ。必ずラスト教えるからなっ」
「酷いなぁっ」

―――心で[ごめん]その言葉を友達に告げて、
考えていた言葉を渡して
笑い合って、話題は来週の課題へと移る様にしてしまった。



三日後
土曜日
少しでも早めに起きて、
休みの日でも校舎に行く。
勿論。しっかりと制服を着て。

前を向いて、
太陽の出ている間は全力で色々な事を吸収する事にしていた。


分からない事がある時に調べていると・・・・・・。

愛しい人と離れてから
時々紙を滑る様に見える幻・・・
―――細い指先。
キーを叩いたり、ドアをノックしたり・・・
その指先を痛める事はしないから
誰よりも・・・綺麗に感じた
大好きな場所が見える。



全て終わらせると、寮に戻って、
着替えをして
急ぐ気持ちを押さえながら
日が沈みかけた空の下に飛び出す。

―――きちんと約束はしていない。
でも、元々多くを語らないなら
心が感じるままに動いた方が良いから・・・・・・。


勿論。自分の気持ちは
ほんの少しだけは伝えていた。
必ず・・・時間があったら・・・・・・。の期待は込めて・・・。



映画館に入って、
好きな珈琲とコーラ。
自分の分だけのポップコーン。
そして・・・・・・後方席に場所を選ぶ。


会場に暗闇が広がり、
来月から始まる映画の予告が・・・・・・


「面白そうだな・・・・・・」
「・・・・・・外れだろう」
「そうですか?」
「あぁ。この監督は好きじゃない」
「中嶋さんが言うなら、そうですね」

暗闇が動く気配がして
横に愛しい体。

用意してあった珈琲の蓋を外して飲む音。
うん。
大好きな・・・・・・音。


「会いたかったです」
「・・・・・・始まるぞ」
「はい」

チュッ。
少し背伸びをして頬にキスをすると
顎を指で掬われて、画面に視線を戻される。

でも、
その指先が優しく撫でて
最後に唇に触れてくれるから
中嶋さんも俺を求めてくれていた事を感じる。


――映画が終わったら
そこから
俺達の幕が・・・・・・



ラストは求めていた
中嶋さんの腕の中に
包まれる時間に・・・・・・



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