中嶋さん誕生日記念に頂きました。
中嶋さんでなくとも、
ほろ酔い啓太の可愛さに癒されます。



「甘い記念日」


「なかじまさんっ。きーてますか?」
「ああ」

その日は、
中嶋さんの誕生日。
『何かプレゼントしたいですっ』
そう言って、
忙しいのは・・・分かっていたけれど。
『まるで主人に懐く犬の様だな』
と、王様に突っ込みを入れられてしまう位、
中嶋さんにとりついていた。
本当は、
必死にプレゼントを探していた。
学園で一番格好良い姿に、姿勢に似合うモノを・・・と。
でも・・・見付からなかった。
以前。
MVPの感謝の気持ちを込めた贈り物は、
『それよりも、お前で良い』
の言葉と共に、
沈められてしまったから、
今度こそ・・・
『お気に入りの逸品』を探したかった。
でも・・・
結局教えてはもらえなくて、
当日の今日。
待ち合わせの時間がいきなり携帯に届いた。
『?』
不思議に思いながらも、一緒に言った場所は・・・。
大人な雰囲気があるけれど。
適度に会話や音がある・・・お店だった。

「これを飲め」
「?」
「お前が好きそうだからな」
「は・・・い?」
中嶋さんが、お酒を飲んでいるのは知っていたけれど。
俺に?
思いながら、そっとグラスを傾けると・・・。

「甘いっ」
「くっ。だろうな」
「・・・これ・・・チョコですか?」
「ああ。チョコに炭酸だ。
お子様には丁度良いだろう」
「酷いですっ」
お酒かと思ったものは、
チョコの味がする炭酸飲料で、
すっと飲めて・・・後から広がる甘いチョコの味がとてもお気に入りになる程。
でも・・・
途中から、おかしくなってきた。

「なかじまさん?」
「何だ」
中嶋さんと隙間を空けて、
隣同士で座っていた筈が、
ソファーに登り、
這う様にして、膝に手を置いてしまっていた。
何故か・・・
自分が自分で無い様な、
いつもよりも甘えたくなってしまう気持ちが抑えられなかった。
甘い・・・この飲み物が体を動かしている様に。
「なかじまさんは、だめです」
「・・・」
「もっと、おやすみしたほうがいいです」
「休んでいる」
「いいえっ。たおれちゃいます」
「そんな軟弱でない」
いつもなら、
きっと邪魔にされてしまいそうな位、
近くに擦り寄っているのに、
今日は頭を・・・撫でてくれる。
もしかして・・・夢?
「おれ・・・なかじまさんがたいせつです」
「だろうな」
「すきです」
「ああ」
「だいすきなんです」
「・・・」
ここまで言ったら・・・
外なのに。
恥ずかしい筈なのに、止まらない。
「なかじまさんっ。きーてますか?」
「ああ」
「どうしても、しごと、なかじまさんじゃないとだめだって、
しってます。
でも・・・」
「疲れたら、お前が癒せば良い」
「はい・・・」
優しい声が振って来る。
つい、引き寄せられる様に、
顔を上げると・・・。
頬を撫でられて、
親指を口に含まされる。
「はぅ・・・」
「お前は、俺を癒し続ければ良い」
「はぅぃ・・・」
「何も考えず。何も見ず。お前のままで」
「・・・・なか・・・さ・・・」
「寝ろ」
「・・・」
ゆっくりと、
頬を頭を、体を撫でられて、
まるでさっきの飲み物に包まれている様な
世界に落ちていった。

あの飲み物。
炭酸だったのか、
お酒だったのかは、分からない。
でも、
最後の中嶋さんの表情が笑顔だったような気がして・・・
不思議な液体だったのかもしれないと、
思ってしまった。

『お前の癒しが贈り物で良い』
優しい声が聞こえて来る。
誕生日の恋人の
甘い・・・声が・・・。



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