I compare thee to a summer’s day
(貴方を夏の日にたとえよう)

  わからない。思考と欲望に塗れながら、啓太は思った。
「はあ、んっ……ああっ……」
  緩やかに身の内をかき混ぜられ、ベッドの上で背がしなった。広げた脚の間で艶めかしく濡れる中心を中嶋の手が達しない様に戒めている。散々焦らされた身体は、もう自分の意思では抑え切れないほど昂っていた。
「中嶋さんっ……っ……もうっ……」
  啓太は縋る瞳で恋人に限界を訴えた。しかし、中嶋はそれを軽く黙殺すると、内壁を抉る様に深く腰を動かした。絶頂にも似た感覚に、啓太が一際、高い嬌声を上げる。
「あ、ああっ……!」
  伏せた蒼穹から透明な涙が零れ落ちた。
  普段は自分より体温が低いのに、今は身体を貫く中嶋の熱に浮かされる。それは嵐の激しさで奥を乱し、内を焦がした。行き場のない快感に苛まれ、身悶えながら、啓太は無意識に中嶋をきつく締めつけた。
「……っ……」
  すると、より強く中嶋の存在を感じて肌が一気に粟立った。追い討ちをかける様に敏感な先端を擦られ、啓太の太腿が小刻みに震える。
(もう、駄目……だけど……)
「もっ、と……あ……中嶋さ、んっ……ああっ……」
  絶え間なく中嶋に突かれ、揺さぶられ、啓太はただシーツを握り締めることしか出来なかった。ひたすら喘ぐだけで、もうこれが快感かどうかさえわからない……が、二人で迎える初めての誕生日の夜だから身も心も総て中嶋にあげたかった。そして、この一瞬に中嶋を刻みつけ……永遠に自分のものとする。
(……そうか……俺、本当は欲張りだったんだ……)

Every fair from fair sometime declines
(美しいものは総て、いつかは消えてゆく)

  受け止めろ、俺の総てを。思考と欲望に塗れながら、中嶋は思った。
「はあ、んっ……ああっ……」
  ベッドの上で艶やかに身悶える啓太に、言い知れぬ深い悦びが込み上げてくる。啓太の身体は既に限界を訴えているが、理性では抑えられない熱が中嶋の中に渦巻いていた。啓太の甘い嬌声は高過ぎず、低過ぎず……丁度良く腰に響いて男を煽る。見事な色香を湛えた肌は、まるで淫らな徒花の様に中嶋の瞳を受けて咲き乱れていた。
「中嶋さんっ……っ……もうっ……」
  啓太が切羽詰った眼差しで中嶋に縋りついた……が、多分に情欲を孕んだ二つの蒼穹は更なる刺激を強請っている様にしか見えない。ふっ、と中嶋が口の端を上げた。その途端、手で戒めている啓太が嬉しそうに小さく震えた。
(良い子だ)
  期待に応えるべく、中嶋は熱い内壁をかき分けて腰を深く突き入れた。
「あ、ああっ……!」
  感覚だけ達したのか、啓太が涙と共に内に抱く中嶋を強く締めつけた。中嶋は小さく息を呑んだ。
「……っ……」
  総ての快楽を搾り取ろうとする啓太に引きずられないよう指で先端の縁を擦ると、華奢な身体が跳ねて白い太腿が痙攣した。啓太の手がシーツに縋りつく。
「もっ、と……中嶋さ、んっ……ああっ……」
(そうだ、啓太)
  そのまま、奥を抉って啓太の意識を奪う……この無垢な心が迷わない様に。自分から決して離れていかない様に。
(……そうして……ただ俺だけを見ていろ……)

The eye of heaven shines
(天上の瞳が輝く)

「啓太……」
  突然、中嶋が啓太の腕と腰を取って身体を抱き起こした。自重で更に奥まで貫かれた啓太が大きく身を逸らす。
「は、ああっ……っ……」
  後ろへ倒れそうになった啓太は必死に中嶋にしがみついた。すると、全身で感じる中嶋の体温が心地良くて、嬉しくて啓太は夢中で強請った。
「中嶋さんっ……もっと……」
「ああ」
  請われるまま、溺れるままに中嶋が下から強く突くと、それに合わせて啓太も深く身を沈めた。自ら艶めかしく腰を揺らして内壁を擦りつける。更には聴覚から熱い吐息や濡れた声が中嶋に絡みついてきた。
「んっ……ああっ……っ……中嶋さ、んっ……」
「何だ……?」
  蕩けた瞳を見上げて中嶋が言った。綺麗に微笑んだ啓太が深く口唇を重ねてくる。身体の境界など、もうとっくに消えていた。ただ互いを抱いて、抱き締めて……不滅の想いを、ここに刻んでゆく。愛している。そう言ったのは、一体、どちらだったのか……
「あ、ああっ……中嶋、さんっ……!」
「……っ……!」
  そして、二人は同時に開放のときを迎えた。

So long as men can breathe
(人が息をする限り)

「はあ……俺って欲張りだったんだ……」
  翌朝、まだ軋む身体を恋人の腕の中で持て余していた啓太が思い出した様に呟いた。
「何だ。今頃、気づいたのか。いつも散々俺を強請っているだろう?」
「そ、それは……そう、です……けど……」
  啓太は言葉を濁した。
  快感に心と身体を乱されて意識が朧になってくると、ただひたすら中嶋を求めてしまう。それは中嶋が好きだからなのか、それとも……
(俺、やっぱり淫乱なのかな……)
  再びため息をつきそうになった啓太の顎を中嶋が静かに捉えた。
「……」
  蒼い炎を秘めた眼差しが、じっと啓太を見つめた。軽く口唇を撫でられた瞬間、背筋が妖しくざわめく。
「あ……」
「啓太、欲しければ、素直に求めろ」
「……良いんですか? 俺、欲張りだから、一生欲しがり続けるかもしれませんよ」
「構わん。お前の体力が持つなら、な」
「……っ……」
  ポンッと啓太は沸騰した。そ、それはちょっと……今だって結構、限界なのに――……
「あ、んっ……」
  首筋を伝う手の感触に肌が粟立った。中嶋が楽しそうに囁いた。
「さあ、どうして欲しい、啓太?」
「……中嶋、さん……」
  啓太は少し躊躇ったが、直ぐに中嶋を引き寄せた。自ら口唇を重ねる。それは、直ぐに深い口づけになって……


2009.12.4
’09 中嶋さんBD記念作品です。
時間軸的に『幸運』の続編になっています。
シェークスピアの『ソネット集』十八番よりの抜粋です。
恋人達には朝も夜も関係ありません。
中嶋さんへ……Happy Birthday.

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