遠藤 :時計の針がそろそろ六時を指そうかというとき、突然、薄暗い空からバケツをひっくり返し
    た様な大雨が降り始めました。啓太が一人不安そうに窓から外を眺めていると、奈緒美が
    再び入って来ます。
杉山 :皆様、夕食の用意が整いました。食堂へご案内いたしますわ。
丹羽 :もうそんな時間か。そういえば、少し腹が減ったな、中嶋。
中嶋 :ああ。
七条 :郁、動けますか?
西園寺:……大丈夫だ。
遠藤 :車酔いから回復した三人は肘掛け椅子から立ち上がりました。西園寺さんはまだ気分が
    悪いのか七条さんに支えられて漸く動けると言った感じです。しかし、奈緒美はそんな四人
    には見向きもせず、真っ直ぐ啓太の傍に来て尋ねました。
杉山 :伊藤さん、どうなさいましたか? 雨が心配ですか?
伊藤 :はい……凄い雨ですね。
杉山 :そうですわね。先ほどラジオでこの辺り一帯に増水警報が出たと聞きましたわ。ああ、スス
    キの野原もあんなに冠水して……まるで大きな池の様ですわ。
七条 :その言葉に僕も外を見て言います。これでは代車は派遣出来そうもないですね。
杉山 :ええ、ですから七条さんも今夜はお泊りになって下さいませ。これも何かの所縁ですから
    遠慮なさらずに。代車は明朝、私が手配しておきますわ。
七条 :有難うございます。では、お言葉に甘えさせて頂きます。
丹羽 :くそっ……到着したときに『目星』を振って周囲を確かめておけば良かったぜ。俺と中嶋は
    30%減でも45%はあるから、どっちかが成功したかもしれねえ。
中嶋 :今となっては仕方がない。だが、これで俺達は完全にこの屋敷から動けなくなった。
西園寺:……
伊藤 :杉山さん、こんなに降って浸水とかは大丈夫ですか? 何か俺に出来ることがあれば……
杉山 :有難うございます、伊藤さん。でも、この屋敷の敷地は周囲より少し高いので多少の増水
    なら問題ありませんの。大正時代からずっとここに建っていますから、その点は折り紙付き
    ですわ。
伊藤 :そんなに昔から! なら、安心ですね。
遠藤 :そして、五人は奈緒美の後について食堂へと向かいました。両開きの重そうな扉を開ける
    と、大きな細長いテーブルと三人の先客がすぐさま目に飛び込んできました。上座に一つあ
    る椅子は主人である奈緒美の席です。客達は左右に五脚ずつ置かれた椅子に適当に座っ
    ているらしく、テーブルの左側、奈緒美の席に一番近い場所には年老いた陰気な男が腰を
    下ろしていました。彼は啓太達を見ると、眉間に深い皺を寄せて偏屈そうに口を真一文字
    に結びました。服は少しくたびれているものの、往年を偲ばれる仕立ての良いものです。そ
    の向かいには、中年でべっ甲の眼鏡を掛けた知的な男がいました。白髪混じりの髪をオー
    ル・バックに纏め、背広にノー・ネクタイと少々ラフな服装です。彼の左隣には啓太と同い年
    くらいの若い女が並んでいました。あまり似合わない大きな眼鏡を掛け、口元に穏やかな微
    笑を浮かべています。彼女は奈緒美と違って髪は短く、紺色のブレザーに白いシャツという
    ボーイッシュな格好ですが、とてもスタイルが良くて魅力的です。残る席は右側に三つ、左
    側に四つです。どこでも好きな場所にどうぞ。
丹羽 :どこでもって言われても、その三人は相続人だろう。なら、啓太もそいつらの近くが良いん
    じゃねえか。
伊藤 :そうですね。なら、俺は年配の男の人の隣に……一つ椅子を空けて座ります。
丹羽 :俺は啓太の右隣に座るぜ。
中嶋 :俺は丹羽の隣の椅子だ。これで左側は埋まったな。
西園寺:では、私は女性の隣に一つ空けて座る。
七条 :僕は当然、郁の隣です。
遠藤 :(予想通りだな。俺が言わなくとも、誰かが三人は相続人だと指摘して啓太から先に席を
    選ばせると思った。そして、啓太は配置を考えて左側を選ぶ。王様が左右のどちらに着くか
    は少し賭けだったが、やはり女性の隣は選ばなかったか。お陰で、やり易くなった)
    啓太達が座ると、奈緒美が料理をワゴンに乗せて運んで来ました。年老いた男の席から
    順番に並べていきます。それはこの屋敷に相応しい洋食で、鮮魚のマリネ、帆立貝のオー
    ブン焼き、タン・シチューといったものです。どれも美味しそうで誰もが、思わず、空腹を覚え
    ました。しかし、年老いた男だけは少し蒼ざめています。
杉山 :ああ、気が利かなくごめんなさい。佐藤さんにはもっと軽めの料理をお出しするべきでした
    わね。
佐藤 :い、いえ……大丈夫、です。タン・シチューは私の好物なので……
七条 :KP(キーパー)、佐藤さんに『心理学』を振ります。
丹羽 :俺もやるぜ。
中嶋 :俺もだ。
遠藤 :啓太はどうする?
伊藤 :俺は……隣に座ってるし、ちょっとくらいなら見ても平気だよな。俺も振るよ。
遠藤 :では、正面から観察出来る七条さんと隣の啓太はそのままで、王様と中嶋さんは席が少し
    離れている上に横顔しか見れないので10%減でロールをします。


七条 :心理学(75)→??
伊藤 :心理学(85)→??
丹羽 :心理学(80-10)→??
中嶋 :心理学(80-10)→??


遠藤 :(王様はHP(耐久力)が高いから少しずつ削って確実に仕留めるか)
    七条さんは佐藤は嘘を言っていないと思いました。啓太は佐藤がなぜか料理に戸惑ってい
    ると感じました。王様は佐藤の顔を覗き込もうとしてマリネの皿に手をついてひっくり返して
    しまいました。しかも、そのときに皿が割れて左の掌を深く切ってしまいます。HP(耐久力)
    を1減らして下さい。中嶋さんはそれに気を取られて佐藤の表情を窺うことが出来ませんで
    した。


丹羽 :HP(17)→16


丹羽 :今度は俺がファンブルか……ダイス荒振り過ぎだろう。
西園寺:どうやら臣は成功だな。啓太は微妙だが、あの数値だ。恐らく成功だろう。そして、中嶋は
    失敗か。
伊藤 :和希、俺の『応急手当』で王様を治療出来ないかな?
遠藤 :出来るよ、啓太、ロールに成功したら1D3で回復する。但し、17以上にはならない。失敗
    したら勿論、回復はしないよ。
伊藤 :減ったの1だけだけど、試しにやってみる。
遠藤 :わかった。


伊藤 :応急手当(75)→83 失敗


伊藤 :すいません、王様。
丹羽 :気にするなよ、啓太、大した傷じゃねえんだから。
伊藤 :はい……
遠藤 :(ああ、そんなに気落ちしなくても……本当に啓太は優しいな)
    啓太は血を見て動揺してしまい、きちんと手当て出来ませんでした。奈緒美は割れた皿や
    零れた料理を手際良く片づけて王様の傷の手当てをします。
丹羽 :有難うございます。食事中にお騒がせして申し訳ありませんでした。
    (奈緒美は応接間では俺達を無視したが、啓太の前だと妙に親切だな)
杉山 :いえ、お気になさらず。それよりも私が手当て出来る傷で良かったですわ。この天気では
    病院へも行けませんもの。
金谷 :全くですね。あっ、申し遅れました。皆さん、私は金谷譲治と言います。杉山早苗さんには
    父がお世話になったそうで……この度は奈緒美さんから手紙を頂き、参上した次第です。
    以前は大学で教鞭を取っておりましたが、今は職なしの身で気が向いたときに論文なんぞ
    を書いています。専門は民俗学です。今回の遺品は、とても興味深いものの様ですな。
遠藤 :すると、隣の若い女も慌てて口を開きました。
藤田 :こんにちは。藤田綺羅子です。私はお婆さんの遺品があると手紙を貰って……何だか昔
    の話で実感はわかないんですが、杉山さんが困ってるみたいだったのでお邪魔しました。
遠藤 :次は佐藤です。
佐藤 :佐藤政雄です。杉山早苗さんとは昔、友人でしたが、彼女が行方不明になってからはこの
    家とも全く付き合いがなく……ここに来るのは五十年……いや、七十年振りぐらいでしょう
    か……
藤田 :そんなになんですか! なら、ここもかなり変わったんじゃないですか?
佐藤 :いや、この屋敷は昔と変わっていない……物忘れの酷くなった老いぼれの頭にも、ここの
    ことはしっかり残っている……本当に、ここは何も変わっていない……
遠藤 :佐藤は落ち着かない様子で自己紹介をすると、顔を伏せて黙り込んでしまいました。最後
    に奈緒美が自分の席に着いて言いました。
杉山 :私も改めて自己紹介いたしますわ。私が皆様にお手紙を差し上げた杉山奈緒美です。本
    日はお忙しい中、当屋敷にお集まり頂き、誠に有難うございます。


 う~ん、と丹羽が唸った。
「佐藤は共同管理の経緯を知る唯一の人間だが、どうも様子が変だな」
「だが、今、重要なことが一つわかった」
 西園寺の言葉に七条は頷いた。
「杉山早苗は死亡ではなく、行方不明になったということですね。現時点で正確な日時は不明ですが、佐藤さんの言葉から推測するに七十年は経っていそうです。そんな昔の遺品を今頃、整理するでしょうか」
「ないとは断言出来ない」
 中嶋が言った。西園寺もそれに同意する。
「生死不明ならば子の代――奈緒美にとっては親だが――は辛いだろうから整理出来ないまま、今に至ってしまった可能性もある。先入観は禁物だ」
「郁、もう一度、佐藤さんに『心理学』を振りましょうか?」
「いや、今は顔を伏せているから表情を窺うのは難しいだろう」
 そのとき、突然、啓太が声を上げた。
「あっ、俺、まだ手紙を王様達に見せてなかった」
「車酔いでそれどころじゃなかったからな。食後にでも見せてくれ」
「はい、王様」
「伊藤君、もう少しクッキーをいかがですか?」
 七条が啓太の菓子皿にクッキーを追加した。
「有難うございます、七条さん。本当にこれ、紅茶に良く合って美味しいですね」
「ふふっ、そうでしょう。この紅茶は伊藤君に飲ませたくて郁が態々取り寄せたものなんです。だから、僕も紅茶に合って伊藤君の好きそうなお菓子を用意しました。今日、ここに持って来て正解でしたね」
「臣、それを言う必要はないだろう」
 西園寺は少し不満そうに七条を見やった……が、啓太の嬉しそうな視線に気づいて綺麗に微笑んだ。コホンと和希が態とらしい咳払いをした。
「特に何もないなら夕食の場面を続けます」
 内心の苛立ちを隠し、和希はノートPCに目を向けた。メールの着信はない。まだ用意出来ないのか、石塚……
 有能だが、ときに職権を乱用する理事長に石塚が遠くでまた一つため息をついた。

遠藤 :外の雨は更に激しさを増すものの、食堂は和やかな雰囲気に包まれていました。自己紹
    介を済ましたことで少し打ち解けたのか、美味しい料理に舌鼓を打ちながら、互いに当たり
    障りのない話をしています。未だ気分の優れない西園寺さんはコンソメ・スープだけですが、
    それは奈緒美の人柄が溢れてくる様な胃に優しい味でした。佐藤は食事を殆ど口にせず、
    時折、奈緒美と綺羅子を見て怯えた様に目を逸らしています。金谷は眼光こそ鋭いものの、
    それは教鞭を取っていた頃の名残らしく話題が豊富で言葉の端々に深い教養を感じまし
    た。綺羅子は主に聞き役ですが、水面に照り映える陽射しの様に明るい笑顔がとても魅力
    的です。時折、中嶋さんに目をやっては恥ずかしそうな微笑を浮かべます。


「おっ、さすがAPP(容姿)18だな、中嶋」
 丹羽が揶揄する様に言った。七条は小さなため息をついた。
「綺羅子さんはまだ若いので、この人の毒牙に掛からないか心配です」
 すると、和希がさり気なく補足した。
「綺羅子はAPP(容姿)14です」
 ほう、と西園寺が呟いた。
「APP(容姿)の期待値は10だからモデル並みだな」
「ちなみに、奈緒美は16です」
「……」
 それを聞いた啓太は複雑な顔をして机に視線を落とした。
(これはゲームの中の話だってわかってはいるけど……)
 綺麗な人からそんな視線を向けられたら誰でも悪い気はしないだろう。別に自分は恋人ではないから、それについて何かを言う権利はない……が、どうしてこんなもやもやした気分になるんだろう……
(俺、もしかして、中嶋さんのこと……)
 啓太が無言で俯いていると、右から中嶋の小さなため息が聞こえた。
「遠藤、俺はTRPGで女を探すほど不自由はしていない」
「いっそ、それも楽しいかもしれませんよ。ここには何でも思い通りに出来る美男美女が揃っていますから」
「だが、その演技をするのがお前では興醒めだな。こいつなら……まあ、考えなくもない」
 そう言うと、中嶋はすっと啓太の顎を捉えた。驚く啓太の口唇を素早く奪う。ほんの一瞬……しかし、和希の怒りを買うには充分な長さだった。
「なっ……!」
 思わず、和希は腰を浮かした。
 和希の見たところ、啓太の心は未だ中嶋と自分の間で揺れていた。だから、啓太に綺羅子がどう扱われるか見せて中嶋を蹴落とすつもりが裏目に出てしまった。よくも俺の目の前で堂々とっ……!
 すると、丹羽が慌てて仲裁に入った。
「中嶋、無駄に遠藤を煽るなよ。話がややこしくなるだろう」
(あ~あ、完全に中嶋死亡フラグが立ったな、今)
「中嶋っ……!」
「伊藤君、これを……!」
 西園寺の鋭い批難に七条がすぐさま反応した。自分の菓子皿からクッキーを摘むと、突然の出来事にぼうっとしている啓太の前に差し出す。
「口直しです……食べて下さい」
「んっ……あ……有難う、ございます……七条さん……」
 舌の上に転がる甘いチョコレートの味と芳醇なバターの香りに啓太の意識が徐々にはっきりしてきた。
(今、俺……中嶋さんに……キス、された……って、えっ!? こ、ここでか!? な、何で……どう、して……!)
 ポンッと啓太は沸騰した。それを中嶋は面白そうに眺めている。七条が顔に無理やり微笑を張り付けて先を促した。
「KP(キーパー)、とても不躾で不愉快な人がいましたが、シナリオを再開して下さい」
「……わかりました」
 和希は無表情で頷いた。しかし、全身から抑え切れない仄暗い気が滲み出ている。
(俺を本気にさせた以上、生きてこの屋敷からは出さない……絶対に)

遠藤 :……一時間ほど経ち、そろそろ誰もが食べ終わった頃、不意に奈緒美が言いました。
杉山 :皆様、食事が済みましたら遺品のある部屋へご案内いたしますわ。その後、応接間にて
    コーヒーを用意いたしますので忌憚のないご意見をお聞かせ下さいませ。特に伊藤さんは
    専門の方をお連れしていますから、とても参考になりますわ。
金谷 :おお、それは有難い。是非、所見を述べていただきたいですな。
藤田 :私もそういうことは全然、わからないから助かります。
西園寺:私の知識が皆さんのお役に立てば幸いです。
遠藤 :奈緒美は全員の食器をワゴンに乗せると、これだけ片づけて参ります、と綺羅子とキッチ
    ンへ向かいました。二人は女性同士で年も近いせいもあり、気が合った様です。夕食の料
    理も一緒に作ったと笑顔で話していました。先刻の休憩のとき、屋敷の簡単な見取り図を
    作ったので参考までにどうぞ。


  和希は備品棚から持って来たタブレット型PCを各人に渡して見取り図を送った。


 啓太が感嘆の声を上げた。
「あの短時間で作るなんて凄いよ、和希、有難う」
「まあ、こういうのは得意だからな」
 その言葉に和希の機嫌が急上昇した。ふわりと大人の顔で微笑むと、啓太は仄かに頬を染めた。その空気を無視して、屋敷は何階建てだ、と丹羽が尋ねた。和希は少し不満そうに丹羽を見やった。
「二階建てです」
「部屋はこの図にあるだけか? 隠し部屋とかはねえのか?」
「それは答えられません。自分達で探索して下さい」
 わかった、と丹羽は頷いた。どうやら他にも部屋がありそうだな。屋根裏か。それとも、地下か……

遠藤 :奈緒美について二階に上がると、長い廊下の左右にそれぞれ五つの部屋がありました。
    奈緒美が、一番奥の左側が私の部屋で遺品はそこにあります、と言いました。
杉山 :そういえば、伊藤さん達のお部屋をまだ決めていませんでしたわね。階段に近い左右の
    四部屋が二人部屋で、残りは総て一人部屋ですの。佐藤さんと綺羅子さんは右の一人部
    屋、金谷さんは右端の二人部屋を一人で使っていますわ。皆様はどうなさいますか? 残る
    部屋は五つですから、二人部屋を一人でも構いませんわ。
丹羽 :うん? それだと数が合わねえな。部屋は十室あって一つは奈緒美さん、他に三人だろ
    う。なら、残る部屋は六室のはずだ。
杉山 :ああ、ごめんなさい。一番奥の右側の部屋は使えませんの。だから、左側に一人部屋と
    二人部屋が二つずつ、右側に二人部屋が一つ空いていますわ。
丹羽 :だったら、俺は二人部屋を一人で使わせて貰うぜ。一度、そういうのやってみたかったんだ
    よな。啓太もやるか?
伊藤 :いえ、遠慮します。夜中に起きたらベッドが一つ空いてるなんて怖いじゃないですか。
中嶋 :なら、俺と寝るか、啓太?
伊藤 :えっ!?
    (一緒の部屋ってことだよな……?)
遠藤 :却下します! 啓太は既に一人部屋と決まっています。奈緒美の部屋の隣です。
    (一体、何を考えているんだ、この男は! ゲームとはいえ、俺が啓太との同室を認める訳
    がないだろう!)
伊藤 :和希……
    (中嶋さんは紛らわしい言い方で俺をからかってるだけなのに……でも、和希が怒ってくれ
    てちょっと嬉しいかも……)
中嶋 :ふっ……では、俺はその隣にある一人部屋を使わせて貰う。
遠藤 :啓太、寝るときは忘れずに鍵を掛けるんだぞ。
伊藤 :あ……うん。
    (和希、ゲームでも同じこと言ってる……)
七条 :郁と僕は二人で二人部屋を使います。郁はまだ本調子ではありませんから。
西園寺:丹羽、お前は右と左、どちらの二人部屋を使うつもりだ?
丹羽 :どっちでも良いぜ。
西園寺:なら、私達は右側にする。隣がお前だと落ち着いて眠れそうにないからな。
丹羽 :つれないな、郁ちゃん。なら、俺は郁ちゃんの向かいの部屋にするぜ。
遠藤 :では、部屋割りはこんな感じですね。


  和希は二階の図を各人のタブレット型PCに送った。


「この施錠された部屋ってのはあからさまに怪しいな」
 見取り図を指差しながら、丹羽が呟いた。中嶋が小さく頷く。
「奈緒美は理由を話さなかったからな。後で調べる必要がありそうだ」
「俺の『鍵開け』の出番だな」
 丹羽がグッと拳に力を籠めた。和希が静かな声で言った。
「では、いよいよ遺品のお披露目です」



2014.8.30
和希が黒くなってきました。
啓太を巡って中嶋さんと競り合いつつ、
牽制もしなければいけないので当初の目的を忘れそうです。
石塚さん、間に合うかな。

r  n

Café Grace
inserted by FC2 system