中嶋 :シナリオを再開する前に改めて持ち物を確認する。山へ行ったら、自由に買い物は出来な
いからな。普段は持ち歩かない武器やコンビニで購入する物があるなら申告しろ。いつもの
様に財布や携帯、身分証は常備で構わない。今、出なかったものは幸運判定となる。
丹羽 :俺はキーピックとペン・ライトだな。全部、纏めてポケットに突っ込んである。それと、戦闘
に備えて皮の手袋をしてるぜ。郁ちゃんはどうするんだ? このキャラならナイフを持ってる
だろう。
西園寺:ああ、だが、今回は持って行かない。刃物類を持ち歩くのはリスクのある上に、今回の相
手は恐らく人間だ。神話生物に操られた呪いの末期者といえども、もし、死亡させたら、私
は逮捕されるかもしれない。だから、仕事上、常に持ち歩いているペン・ライトとミニ・ルーペ
だけだ。
丹羽 :随分、メタ読みしてるねえ。
七条 :同じ理由で僕も武器は携行しません。でも、コンビニで缶コーヒーを幾つか買ってビニール
袋に入れて持って行きます。
伊藤 :和希は警官だから武器は持って行くんだろう?
遠藤 :ああ、俺は警棒を持って行くよ。上着のポケットに入れるには少し重そうだけどな。
伊藤 :銃にしないのか?
遠藤 :う~ん、今回、俺はそこまで予期していたとは考え難いからな。
伊藤 :どういうこと?
遠藤 :今日、俺は啓太の家へ事件の資料を持って行っただろう。まだ概要さえ掴んでいない段階
で銃を持ち歩くのは不自然だ。一度、自分のオフィスに戻ったなら持ち出すことも考えられる
けれど、もうそんな時間はないしな。
(それに、また暴発して啓太を傷つけることになったら、俺は……)
伊藤 :そっか。俺はどうしよう。何か武器って言われもピンとこないし……コンビニで絆創膏と傷
薬とチョコレートでも買おうかな。山で遭難したとき、チョコレートで助かったとか聞いたこと
あるし。
遠藤 :ああ、それで良いと思うよ、啓太。
中嶋 :では、お前達が山へ行く前にコンビニで少し小腹を満たそうかと話していると、一瞬、啓太
は視界の隅を誰かが横切った気がした。他の者は気づいてない。どうする?
伊藤 :う~ん、取り敢えず、そっちを見ます。
中嶋 :『幸運』を振れ。
伊藤 :はい。
(先刻から何の判定だろう、これ……)
伊藤 :幸運(70)→71 失敗
伊藤 :あっ、惜しい。
中嶋 :気になって振り返った啓太の視線の先に車のサイド・ミラーがあった。そこに映るお前の後
ろに、今と殆ど変わらないもう一人の自分が立っている。最初の頃は表情も見えないほど遠
かったが、今は随分と近づき、数メートル後ろにまで迫っていた。ただ、まだこちらに話し掛
けてくる気配はない。
伊藤 :えっ!? 話し掛けてくるって……
中嶋 :なぜかそう思ってしまった啓太はぞくりと背筋に悪寒が走った。1/1D6+1のSAN(正気
度)チェックだ。
伊藤 :SAN(42)→83 失敗 1D6+1→7
:SAN(42)→35
:アイデア(75)→17 成功 一時的狂気
伊藤 :なら、RP(ロール・プレイ)します。えっと……また幻覚を見た俺は最初の頃より更に近づ
いてることに怖くなってそこから逃げ出します。わあああっっっ……!!!
遠藤 :咄嗟に啓太の腕を掴みます。
丹羽 :俺達も掴むぜ。話し合ってる最中なら、皆、距離的には大差ねえはずだ。
中嶋 :全員、DEX(敏捷)×5を振れ。七条は時間経過により10%回復したので、20%減で振
れ。
七条 :わかりました。
丹羽 :DEX(80)→81 失敗
西園寺:DEX(80)→59 成功
七条 :DEX(70-20)→73 失敗
遠藤 :DEX(70)→92 失敗
中嶋 :では、お前達がコンビニへ行こうとすると、突然、啓太が悲鳴を上げた。その場から逃げよ
うとする啓太に一斉に手を伸ばすも、西園寺以外は振り払われてしまう。
西園寺:私は啓太の腕をしっかり掴んで胸元へ引き寄せる。
遠藤 :……!?
西園寺:優しく背中を撫でながら、こう言う。落ち着け、啓太……落ち着け。
(啓太は簡単にやるには惜しいからな。自己アピールは可能な限りしておくべきだ)
伊藤 :あっ……っ……
(どうしよう。これって西園寺さんに抱き締められてるんだよな)
中嶋 :(西園寺……)
暫くそうして宥められた啓太は少し落ち着きを取り戻した。
遠藤 :KP(キーパー)、俺は直ぐ啓太の顔を覗き込みます。大丈夫か、啓太? 少し疲れたのか
もしれないから何か口に入れよう。そう言って啓太の手を取ってコンビニへ向かいます。
(全く……油断も隙もない!)
伊藤 :えっ!? 和希、そんなことしなくても……
遠藤 :啓太はまだ動揺しているだろう。また走り出さないよう念のためだよ。
伊藤 :……わかった。
(手を繋いでって……何か恥ずかしい)
中嶋 :(遠藤、何か気づいたのか? これでは……)
先に歩き出した二人に続いて他の三人もコンビニへ向かった。自動ドアを通り抜け、入口近
くのレジの傍にある肉まんの蒸し器を見て店員に声を掛ける。すると、店長らしい中年の男
が笑いながら、啓太に声を掛けた。
店長 :ははっ、これだけ人数がいるなら肉まん一個じゃ足りないな。ちゃんと何個にするか聞いて
きたのかい?
伊藤 :えっ!? あの……どういうことですか?
店長 :つい先刻も来ただろう? それで、肉まんを幾つ買おうか悩んでたじゃないか。
伊藤 :えっ? えっ!?
遠藤 :申し訳ありませんが、啓太はずっと俺達と一緒にいました。貴方は誰かと勘違いしている
と思います。
店長 :あっ、そうなのかい? なら、他人の空似かな。早とちりして悪かったね。
伊藤 :いえ……
中嶋 :お前達は各々好みの物を買うと、コンビニを出た。そのとき、入れ違いに入って来た若い
女が啓太に言った。
女 :あっ、伊藤さん、先刻は有難うございます。お陰で、助かりました。
伊藤 :えっ!? あの……
女 :伊藤さんのお友達も無事に見つかったみたいですね。良かった。
中嶋 :戸惑う啓太に女はふわりと微笑むと、丹羽達に軽く頭を下げてコンビニの中へ消えた。
丹羽 :七条、先刻の夢の内容を聞く前に今の情報も纏めたい。RP(ロール・プレイ)を頼む。
七条 :わかりました。では、僕は伊藤君を見て小さく呟きます。成程……最初、僕が読んだ掲示
板でドッペルゲンガーと言われていたのはこのことだったんですね。
西園寺:ああ、幻覚を見た回数は啓太が最も多い。一定数を超えると、実体化するのかもしれな
い。
伊藤 :そんな……! ドッペルゲンガーって確か会ったら死んじゃうんですよね! 俺、どうしたら
良いんですか!?
丹羽 :自分のドッペルゲンガーと会う前に山へ行って糧を破壊するしかねえ。急ぐぞ。
遠藤 :大丈夫……啓太は、必ず俺が護るから。
伊藤 :和希……有難う……
七条 :山へ向かって歩きながら、僕は皆が肉まんを食べ終わる頃を見計らって先刻の夢の話を
します。古い河川管理用の建物の中で風窓さんは終に狂ってしまったこと。でも、最後まで
レンの硝子は手放さなかったことを。
伊藤 :風窓さんは青い瞳の怪物に狙われていたのに、どうして鏡を直ぐ捨てなかったんだろう。
七条 :多分、捨てられなかったんだと思います。オカルト研究家の性とでも言いますか……恐怖
しつつも、同時に強く惹かれてしまったんです……僕も、その気持ちはわかりますから。
西園寺:やはりレンの硝子が糧の可能性は高い。鏡ならば、壊すのはそう難しくないだろう。
(だが、中嶋がその程度で満足するとは思えない。糧は本当に鏡なのか……?)
中嶋 :なら、お前達がそんな話をしながら歩いていると、やがて細い山道の入口に着いた。地元
民しか知らない様な小さな山だが、道路脇にある古い案内版に地図が張ってある。それを
見ると、確かに山の中腹辺りに川が流れていた。だが、川沿いに建物はなかった。
丹羽 :これじゃあ川のどこにあるかわからねえな。
西園寺:臣の夢の記憶が頼りということか。
七条 :そうですね。取り敢えず、歩いてみないとわかりませんが、見覚えのある景色があったら直
ぐ言います。
中嶋 :では、いよいよお前達が山へ足を踏み入れようとしたそのとき、暗い山道の奥から誰かが
こちらへ向かって歩いて来た。
遠藤 :咄嗟に啓太を後ろに庇います。
七条 :僕は郁を。
丹羽 :俺は皆の前に出て叫ぶぜ。誰だ!
中嶋 :すると、闇の中からお前達の良く知っている男が現れた……俺だ。中嶋は小さく口の端を
上げると、静かな声で言った。意外と早かったな、丹羽……
2019.7.5
漸く中嶋さん登場です。
今までのセッションの流れからして不穏な予感がしますが、
皆、頑張って~
r n