七条 :鏡の部屋へ入った三人はむせ返る血の匂いに、思わず、足を止めました。扉の隙間から
    見た通り、正面の大きな鏡の前には男が血溜まりに一人沈んでいます。そして、先ほどは
    見えませんでしたが、左右の壁際には沢山の人形が置いてありました。ここを調べるには
    技能を振って貰うので、誰が何をするか申告して下さい。
丹羽 :男が気になるが、動揺した俺が死体なんて見たら補正が付くから人形を調べるぜ。
遠藤 :俺は男を調べます。職業的にもそれが自然と思います。
西園寺:私はどちらにするべきか……KP(キーパー)、男を調べるには何の技能が要る?
七条 :『拳銃』と『医学』です。『アイデア』でも少し情報が出ます。それ以外の代用は認めません。
西園寺:ふむ……遠藤のダイス目は信用出来ないが、それならば、二つ振れるのか。では、私も
    人形を調べよう。
    (いかに遠藤でも、どちらか一つは成功するだろう)
七条 :では、まずは遠藤君、『拳銃』と『アイデア』を振って下さい。


遠藤 :拳銃(80)→84 失敗
    :アイデア(75)→79 失敗


「……」
 無音の沈黙が室内に落ちた。丹羽が生温い瞳を和希に向ける。
「この値で外すとか。しかも、両方……さすがだぜ、遠藤」
「和希……」
 啓太の何とも言えない同情の籠もった声に和希は焦った。運はどうしようもないが、啓太の前で役立たずには絶対になりたくなかった。形振り構わず、和希は机の上に大きく身を乗り出した。
「KP(キーパー)、どうか温情を……!」
「困りましたね」
 七条は傍に置いてあるノートPCに目を落とした。実は、この情報を取り零しても全く問題はなかった。既に丹羽達は気づいているに違いないから。
(でも、ここで重要を装えば、あれから目を逸らせられるかもしれません)
「わかりました。では、こうしましょう。もう一度、1/1D4のSAN(正気度)チェックをして貰います。その後なら、再ロールを許可します」
「それで構いません。有難うございます」
 神妙な面持ちで和希は頷いた。

遠藤 :SAN(38)→42 失敗 1D4→2
    :SAN(38)→36
    :拳銃(80)→64 成功
    :アイデア(75)→38 成功


遠藤 :……良かった。
丹羽 :最初からこの値が欲しかったな、遠藤。
七条 :死体に近寄った遠藤君は首のない男から未だ流れる新鮮な血と、薔薇の花びらの様に散
    らばる細かな肉片に酷く気分が悪くなりました。しかし、事件を目撃した警察官として、しっ
    かり状況を検分しました。その結果、男は大型の銃で頭を吹き飛ばされて死亡しているとわ
    かりました。男の右手にはS&W M629が握られています。映画などで有名な44マグナ
    ムですね。銃の扱いに長けた貴方なら、こんな大口径の銃で頭を撃てば痛みを感じる前に
    即死すると知っていました。だから、最初は男が鏡に向かって撃った弾が不運な偶然によっ
    て跳ね返って頭に当たったと思いました。けれども、鏡のどこを見てもひび割れ一つありま
    せん。しかも、これが跳弾によるものなら、死体の向きにどこか違和感を覚えました。こんな
    ふうになるには身体の真正面、鏡の向こうから弾丸が飛んできたのではないだろうか、と。
遠藤 :……成程。
    (普通に撃ったら相打ちになりそうだな)
七条 :続いて丹羽会長と郁の処理を行います。人形には『医学』か『生物学』、『アイデア』が振れ
    ます。また、『目星』をすることで別情報が出ます。何を振るか決めて下さい。
丹羽 :『医学』も『生物学』も取ってねえが、俺はワンチャンに賭けるぜ。『医学』と『アイデア』、『目
    星』を振る。
西園寺:初期値5と1では時間の無駄だ。私は『アイデア』と『目星』にする。


丹羽 :医学(5)→67 失敗
    :アイデア(75)→28 成功
    :目星(75)→67 成功
西園寺:アイデア(75)→14 成功
    :目星(85)→82 成功


西園寺:ほら、見ろ。私の言った通りだろう、丹羽。
丹羽 :良いんだよ、これで。チャレンジ精神が大事なんだ。
西園寺:お前は挑戦と無謀を履き違えているだけだ。
中嶋 :何を今更……完全に、いつもの丹羽だろう。
丹羽 :おっ、さすがわかってるじゃねえか、中嶋。
七条 :それに否応なく巻き込まれる身にもなって欲しいですが、まあ、その話は置いておいて描
    写に移ります。丹羽会長と郁は左右に分かれて人形の山を調べ始めました。どれも等身大
    でとてもリアルな人形ですが、胸や頭に穴の開いているものや鳥の足の様に痩せ細ってい
    るものが多く、またどの顔も酷く苦しそうな顔をしていました。先ほど見た光景から、まるで
    死体を固めた様に感じた二人はSAN(正気度)チェックです。1/1D4でお願いします。
丹羽 :死んだら、俺達もそうなるってことか。


丹羽 :SAN(53)→19 成功
    :SAN(53)→52
西園寺:SAN(84)→66 成功
    :SAN(84)→83


七条 :そんな不気味な人形の山を見ていられなくて丹羽会長は自然に視線を逸らしました。する
    と、人形の陰に隠れる様に手編みの青いクマのぬいぐるみがあることに気がつきました。
遠藤 :……七条さん。
七条 :ふふっ、そんなに睨まないで下さい。理事長代理のクマさんにも活躍の場を設けただけで
    す。さて、ぬいぐるみをどうしますか、丹羽会長?
丹羽 :殴る……と言いたいがところだが、まあ、手に取るだろうな。
七条 :すると、青いクマさんが言いました。
クマ :気安く触らないでくれないか。
丹羽 :……!?
七条 :不意に聞こえた子供の様な幼い声に丹羽会長の手が止まりました。それを聞きつけた郁
    と遠藤君も何事かと丹羽会長の処へ集まって来ました。クマさんは貴方達と話し易い高さに
    なるまで人形の山をよじ登ると、もこもこした手で軽く埃を払いました。
クマ :やあ、君達、やっと僕に気づいたね。はじめまして、かな……一応。僕はこの世界の審判を
    してるクマちゃんだ。まあ、名前は今、適当に付けたんだけど。
丹羽 :……
    (やっぱり殴りてえ)
クマ :さて、ルールを説明するね。君達には二つの謎を解き明かして貰う。
西園寺:待て。何のルールのことを言っている?
クマ :勿論、ゲームのルールだよ。クマちゃんの、クマちゃんによる、クマちゃんのためのゲーム。
    君達はその参加者に選ばれたんだ。拒否は認めないよ。だから、これから言う二つの質問
    に答えてね。一つ、君達がこの世界へ来たのはなぜか。二つ、もう一人とは誰か。正解した
    ら、元の世界への帰り方を教えてあげる。三人寄れば文殊の知恵って言うから、五人もいれ
    ば簡単でしょ。何か気になることがあったら、答えられる範囲で教えてあげるよ。奴らにも大
    分、サービスしてあげたしね。
七条 :そう言ってクマさんは周りの人形を見回しました。
クマ :なのに、どいつもこいつもクリア出来なかったんだ。後であれも片づけなくちゃ。全く……あ
    いつがぐずぐずしてるから、掃除が間に合わなかったじゃないか。君達には不快な思いをさ
    せて悪かったね。でも、良いヒントになっただろう。
丹羽 :お前……
クマ :まあ、そろそろ厭きてきたから今回を最後にするつもりさ。だから、頑張って正解してね。そ
    うしたら、おまけで良いことがあるかもしれない……僕の気分次第だけど。それじゃあ、答え
    がわかったら、また来てね。僕はここで待ってるからさ。バイバイ~
七条 :クマさんは小さな手を大きく振りました。次の瞬間、三人は中央の部屋の真ん中に立って
    いました。南の部屋の前では伊藤君の応急手当が丁度終わったところです。
丹羽 :なら、取り敢えず、合流するか。俺は驚いた声を上げるぜ。うわっ、何だ!?
西園寺:……!? ここは……中央の部屋だな。
遠藤 :瞬間移動……なら、あのクマのぬいぐるみは……
伊藤 :あっ、中嶋さん、皆、戻って来ましたよ。
中嶋 :何かあったらしいな。東西の部屋を調べる前に話を聞いた方が良さそうだ……行くぞ。
伊藤 :はい。
丹羽 :七条、鏡の部屋で見たことを話したらSAN(正気度)チェックはどうなる?
七条 :臨場感たっぷりに話すならまだしも、特にSAN(正気度)チェックはしなくて良いです。鏡に
    向かって銃を撃ったら死んだなんて実感が湧かないでしょう。
西園寺:ならば、全員で情報を共有しても大丈夫だな。
中嶋 :KP(キーパー)、描写を進める前に少しPL(プレイヤー)会議をしたい。
七条 :わかりました。では、一旦、ここで場面を切ります。



2020.8.13
和希がまたやってくれました。
他の人と同じ様にダイスを振っているのに……
SAN値チェックは厳しくないけれど、
情報を拾えないと困るので頑張って~

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Café Grace
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