七条 :質素な木の扉を開けると、そこは辺り一面、物に溢れていました。壁も天井もないがらんと
    した空間には様々な家具が放置され、それらの上には細々とした物が乱雑に積まれていま
    す。ぞんざいな描写で申し訳ありませんが、とにかくありとあらゆる物があるということです。
丹羽 :了解。探すのは『目星』で良いか?
七条 :いいえ、ここで何かを見つけるには探し物に関連した技能を振って貰います。たとえば、拳
    銃なら『拳銃』、注射器なら『医学』か『生物学』です。代用判定は認めません。個数は幸運
    判定の後に1D10で決めます。幸運判定に失敗すると見つけた物は壊れていたことになる
    ので、無理に振らなくても構いません。その場合、入手数は確定で1になります。


「成程……具体名を挙げなかったのは言質を取らせないためか」
 西園寺の言葉に七条は曖昧に微笑んだ。丹羽が低く唸った。
「補正を要求出来る隙はねえな。これだと注射器の入手は絶望的か。『医学』も『生物学』も誰も持ってねえ」
「血液を入手するだけなら何も注射器に拘る必要はない。ナイフで切って瓶にでも入れたら良い」
 素っ気無く中嶋が言った。丹羽は拳を握り締めた。
「ナイフなら『こぶし』だな。それなら任せろ」
「拳銃は技能を持っているのが俺だけなので、援護をお願いします。この数値で失敗はないと思いたいですが、自分のダイス運が信用出来ません」
 気まずそうに和希は頬を掻いた。西園寺が短く嘆息した。
「確かにお前のダイス運の酷さは散々目にしてきた。初期値20%では分が良いとは言えないが、やるだけはやってみよう」
「まあ、四人もいれば何とかなるんじゃねえか」
 自分のダイジェスティブ・ビスケットを食べてしまった丹羽は中嶋の菓子皿に手を伸ばした。中嶋は無言でコーヒーを飲んでいる。文句を言わないのは暗黙の内に了解しているらしい。
 和希は軽く頭を下げた。
「有難うございます。ロールに成功したら、俺は確定入手にするつもりです。幸運判定は更に自信がないので」
「……えっ!?」
 突然、啓太が驚いた声を上げた。
「銃は複数あった方が良くないか、和希? 失敗するとは限らないし……せめて振るだけ振ってみたら……?」
「いや、拳銃の入手は必須だから危険は冒さない方が良い。俺では最悪、ファンブルもあり得るからな」
「そっか……」
 啓太は小さく呟いた。微かに表情が曇る。
(でも、それだと一つの銃を順番に使うことになる。鏡の向こうの誰かが死ぬのを待ちながら……)

七条 :さて、そろそろ進めましょうか。何から振りますか? 描写は一つずつ行うので、まずは探
    し物を指定して下さい。
丹羽 :勿論、『拳銃』だ。これがねえと始まらねえ。
七条 :わかりました。では、遠藤君以外は初期値で振って下さい。


丹羽 :拳銃(20)→93 失敗
中嶋 :拳銃(20)→32 失敗
西園寺:拳銃(20)→87 失敗
遠藤 :拳銃(80)→03 クリティカル
伊藤 :拳銃(20)→28 失敗


丹羽 :おおっ、ここでクリティカルか、遠藤。
遠藤 :ああ、漸く女神が俺に微笑んでくれた気がします……!
七条 :良かったですね。なら、次の『幸運』は自動成功にします。遠藤君は1D10で見つけた拳銃
    の数を決めて下さい。
遠藤 :有難うございます。幸運は低いので助かります。


遠藤 :1D10→6


伊藤 :あっ、やった……!
    (良かった。一人一個ずつ持てる)
七条 :貴方達は銃を求めて付近を手分けして探し始めました。すると、暫くして遠藤君は戸棚の
    引き出しから大量の44口径リボルバーを見つけました。数えると、六丁もあります。弾倉に
    は全部で十個の弾が入っていました。
遠藤 :それは実弾ですか?
七条 :はい、銃の扱いに慣れた人なら手に取っただけで、それらが総て実弾だとわかるでしょう。
    失敗した四人は、それぞれ小さな水晶玉を一つ見つけました。これには『オカルト』、『クトゥ
    ルフ神話』、『博物学』、または『知識』の半分を振ることが出来ます。端数は切り上げます。
    技能による情報の差はありませんので、お好きなのでどうぞ。
丹羽 :なら、俺は『知識』の半分で振るぜ。
中嶋 :俺もだ。
西園寺:私は『博物学』にする。
伊藤 :俺は『知識』の半分でお願いします。


丹羽 :知識(95/2)→47 成功
中嶋 :知識(85/2)→23 成功
西園寺:博物学(45)→49 失敗
伊藤 :知識(80/2)→92 失敗


七条 :成功した二人はこの小さな水晶玉から不思議な力を感じ、最近、聞いた噂話を思い出しま
    した。それは思い出し玉というもので、それを覗くと自分の忘れていることを一つ映してくれ
    るそうです。もし、これがそうなら、ここへ来る直前のことがわかるかもしれないと思います。
丹羽 :そういえば、記憶がなかったな。まあ、今更って気もするが。
七条 :水晶玉は全部で四つあります。使わないなら誰かにあげても構いません。水晶玉を使いま
    すか? 使いませんか?
丹羽 :一応、使う。もしかしたら、新情報が出るかもしれねえしな。
中嶋 :俺は使わない。帰る方法のわかった今、もう思い出す必要はないだろう。誰かに渡すかど
    うかは今は保留する。
西園寺:私は使う。私の中にある私の知らない記憶というのは不愉快だ。
伊藤 :俺も使います。やっぱりどうしてこうなったか気になるので……
七条 :わかりました。では、水晶玉に映ったものを一人ずつ描写します。どれも時刻は午前十時
    です。丹羽会長はそろそろ予約の依頼人が事務所に来る時間なので、身だしなみを整えよ
    うと壁に掛かっている鏡を覗き込みました。少し緩んだネクタイをきちんと締め直し、軽く髪
    を手で撫でつけると、先ほどよりは余裕と信頼を感じさせる探偵の姿になった気がします。
    よし、と丹羽会長は満足げに呟きました。その瞬間、水晶玉が割れました。
    郁は郊外の骨董市へ行くため身軽な服に着替えていました。鏡の前で少し悩んだものの、
    初夏の陽射し避けに一応、帽子を被って行くことにしました。これで出掛ける準備は完璧と
    車のキーを手に取ったところで、やはり水晶玉が割れました。
    伊藤君は静かな居間でノートPCを広げ、明日の講義に提出するレポートを仕上げていまし
    た。すると、突然、画面が暗転しました。まるで鏡の様な液晶に驚いた伊藤君の顔が映って
    います。そこで水晶玉が割れました。
伊藤 :……? 何か俺のだけ中途半端ですね。
遠藤 :KP(キーパー)、その先はないんですか?
七条 :さあ……もう一つ水晶玉を使えば、わかるかもしれません。
丹羽 :ここへ来る直前の啓太の記憶に何かあるのか?
    (だが、失敗して手に入った物は大抵、ろくなものじゃねえんだよな)
中嶋 :こいつだけとは限らないだろう。俺と遠藤は、まだ使っていない。
西園寺:ああ、二人の記憶なくして判断は出来ない。取り敢えず、今は探索を進めるべきだ。そう
    すれば、更に水晶玉が手に入るかもしれない。
丹羽 :そうだな。銃は手に入ったから次はナイフか。瓶は出来たらってことで。ナイフは『こぶし』
    だよな。瓶は何を振れば良い?
七条 :その前に描写をもう一つ入れます。拳銃が見つかって安心した貴方達は、ふとあることに
    気づきました。先刻より明らかに扉が遠のいています。あと一つ探すくらいの時間なら大丈
    夫ですが、扉を見失ったら恐らく出口がわからなくなるでしょう。
伊藤 :それはもう戻れないってことですか?
七条 :いえ、『ナビゲート』に成功すれば戻れます。
伊藤 :ううっ、誰も持ってません……なら、探索はあと一回が限度ですね。
中嶋 :星の精と戦闘しないのならナイフは一本で充分だ。振るのは丹羽だけで良いだろう。瓶を
    見つけるための技能は何だ?
七条 :ありふれた物ですから『目星』で構いません。
中嶋 :それなら、一番高いのは遠藤か。
遠藤 :いえ、ここは西園寺さんでお願いします。俺は……少し考えさせて下さい。
西園寺:(遠藤は迷うとは珍しいな)
    ならば、私が『目星』をしよう。
七条 :他に探し物をする人はいますか?
中嶋 :俺はしない。
伊藤 :俺も特にないです。
    (水晶玉は欲しいけど、探す物が思いつかない……)
七条 :では、丹羽会長は『こぶし』、郁は『目星』をお願いします。
丹羽 :七条、成功したら確定入手だ。
七条 :それは成功してから言って下さい。
丹羽 :この確率で外すかよ。ほらよっと。


丹羽 :こぶし(85)→98 ファンブル
西園寺:目星(85)→02 クリティカル


丹羽 :うぐっ……!
中嶋 :……哲ちゃん。
丹羽 :いや、これは俺のせいじゃねえ! きっと俺のダイス運が遠藤に吸い取られたんだ!
遠藤 :人聞きの悪いことを言わないで下さい、王様。
七条 :おやおや、見苦しいですね。でも、ここでファンブルを出されては僕も困ります。郁、結果を
    相殺して良いですか? クリティカル報酬として幸運判定を免除しても意味はないと思いま
    すので。
西園寺:ああ、それで構わない。瓶は確定入手にする。
七条 :有難うございます。なら、郁は古い書き物机の上で小瓶を、丹羽会長はまた一つ水晶玉を
    見つけました。まだ探し物をしてない人なら扉を見失わずにナイフを探すことが出来ます。
丹羽 :誰か頼む……!
伊藤 :それなら俺が……KP(キーパー)、ナイフを探します。
七条 :『こぶし』でどうぞ。


伊藤 :こぶし(50)→65 失敗


七条 :伊藤君もナイフは見つけられませんでしたが、代わりに水晶玉を見つけました。
伊藤 :やった……あっ、いえ……
    (これで記憶の続きが見れる……!)
中嶋 :はあ……仕方がない。俺も振る。


中嶋 :こぶし(50)→35 成功


中嶋 :当然、確定入手だ。
七条 :では、貴方は古びた椅子の下から一本のナイフを見つけました。遠藤君が探し物をしない
    なら場面を進めます。
遠藤 :探し物はありませんが……KP(キーパー)、中央の部屋に落ちていた二枚の紙はまだ中
    嶋さんが持っていますよね。ナイフを探す前にそれを俺に渡したことに出来ませんか? 駄
    目なら中央の部屋へ戻ってから受け取ります。
七条 :(ああ、これは気づかれましたね)
    どちらも結果は同じなので許可します。
遠藤 :有難うございます。なら、俺は皆が探し物をしている間に鏡文字と普通の文字の筆跡を調
    べます。何を振れば良いですか?
七条 :『目星』と『アイデア』の組み合わせロールですね。


遠藤 :目星(88)+アイデア(75)→63 成功


七条 :メモ書きされた紙の表と裏の字をじっくり見た遠藤君は、それが両方とも伊藤君の筆跡だ
    と気づきました。
遠藤 :そうですか……
七条 :ここで探し物をしていた四人が戻って来ます。扉は先ほどよりも更に遠のき、今や目を離し
    たら見失ってしまいそうです。不安を覚えた貴方達は見つけた物を持って急いで部屋から出
    ました。さて、これからどうしますか?



2021.4.23
和希ほどではないものの、
王様のダイス運が地味に悪いです。
ダイスを振ってから書くので、
予想通りに行かないと展開に困るのに~

r  n

Café Grace
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